マクロ経済
マクロ経済学はとても大事です。
インフレは進み、為替や金利、コロナやら戦争で世界が激しく動いています。世界経済や政府・中央銀行の方向性を理解して、投資のアウトラインを決めるためにもマクロ経済学の基本は役に立ちます。
世界のエリートが学ぶマクロ経済入門
この本はとても良かった。
厚くて難しいマクロ経済学のように、複雑な式やグラフが出てきません。
かといって簡単な本でもなく、ハーバード・ビジネス・スクールのプログラムでの必読書だということなので、一回で読んで理解出来るのはそれなりの素養がある人で、多くの人にとっては何回か読んで理解できるレベルだと思います。
複雑なマクロ経済学の全体像を眺めるのに丁度良いです。
GDP(アウトプット)が大切
マクロ経済学で最も重要なのは「アウトプット」です。
①アウトプットとは?
ある国が生み出す生産量(付加価値)のことで、最も代表的な指標が「GDP(国内総生産)」です。国の経済的パワーであり、物質的豊かさの指標です。マクロ経済学で最も重要な、そして求め続ける指標です。
「GDP」が高い国は経済的にパワーがあるし、一人当たり「GDP」が高いと国民生活も経済的に豊かです。また「GDP」が上昇している国は投資に適しているとも言えます。
GDPは以下の方法で求められます。
GDPの等式
GDP=C+I+G+EX-IM
この式は国の「GDP」が以下から算出することを表しています。
C(消費)
I(投資)
G(政府支出)
EX(輸出)
IM(輸入)
これらが国のアウトプットの各要素です。そして合計であるGDPの伸び率が「経済成長率」となります。
この計算を「国民経済計算」といい、この計算によりGDPが求められると共に、各国比較や時系列比較など各国のGDP(アウトプット)がどのように成り立っているかの分析が出来ます。
なお、これは支出面(最終消費者の支出の和)からGDPを算出する方法であり、他に生産面(付加価値の和)と分配面(所得の和)から算出する方法があります。三面等価の法則-wikipedia
名目GDPと実質GDP
ここで重要な概念が「名目」と「実質」の概念です。
というのもGDPの算定に使う様々な財の価格(いわゆる「物価」)は常に変化し続けているものだからです。
名目→物価変動を調整しない計算
実質→物価変動を調整した計算
※この概念はGDP以外でも「名目金利と実質金利」にも当てはまります。
すなわち名目GDPだと物価変動を調整しないので、インフレなど物価変動が起こっただけで数値が動いてしまいます。アウトプットの指標として考えるならば物価変動を調整した実質GDPが適していると言えます。
※名目GDP=「P:総物価水準(GDPデフレータ)」×実質GDP
GDPデフレータ=名目GDP/実質GDP
例えば内閣府のGDP計算によりますと、2021年のGDPは名目が541.6兆円、実質が536.9兆円となっています。上記公式に当てはめるとGDPデフレータは1.008となりややインフレ状態となります。(1を上回るとインフレ、下回るとデフレ)
②貨幣
「貨幣」はマクロ経済においてアウトプットの次に重要な概念です。
いわゆる「$」や「円」のことで、様々な財やサービスの価値尺度であり交換手段であり、経済において極めて重要な役割となっています。
そして重要なのは、貨幣の価格は絶対的なものではなく常に変動しながら相対的なものであるということです。
貨幣の価格
①市中金利
②為替レート
③総物価水準
貨幣の価格はこの3つの要因により決まります。
注)例えば為替レートで1ドル=130円だとしても、それはあくまで為替レートにおける日本円の価格のことであり、実際の日本円の価格には市中金利や総物価水準の要素も加わってきます。
あるいはこれらの各変数はマネーサプライ(市中の貨幣量)の増減に影響し合い、結果として貨幣の価格を決定させるとも言えます。
→①市中金利の下落
マネーサプライの増加→②為替レートの下落(円安)
→③総物価水準の上昇(インフレ)
↓↓↓
貨幣価格の下落
このマネーサプライ(市中の貨幣量)と貨幣価格は需給関係であること、そしてマネーサプライと①市中金利②為替レート③総物価水準とが影響し合うということは、マクロ経済学における基本原理であり、これを知っておくと経済動向の方向性がわかりやすくなります。
中央銀行の役目
中央銀行(日本銀行や米国FRB)の役目もここにあります。
金融政策(①公定歩合操作②準備率操作③公開市場操作)を通じてマネーサプライを増減させることにより、上記の各変数を動かし、経済を安定的に持続的に成長させるところにあります。
さて、上記の基本原理は経済の動向を予想するには必ず知っておくべきことではあり、実際の経済もこの通りに動く確率が高いのですが、経済予測で難しいのがこの通りに動かないことも多いということです。
その原因には「期待」が影響しています。
期待
「期待」とは人々の動きであり、良い期待も悪い期待もあります。
経済とは人々の動きの集合であり、その時々ごとに様々な個人や企業や政府が、様々な思惑や予想をして実にバラバラの行動をするため、上記の基本原理通りには動かないことが多々あるのです。
ケインズはこのことを「アニマル・スピリット」と名付けました。
例えば何十年ぶりの円安となると、モノが高くなるだろうなと多くの人々が予感します。しかし実際の動きは極めて複雑です。海外資産に移動したり、今のうちに物を買ってしまおうとして消費が伸びるかもしれないし、景気が悪くなると思って貯金に走ってしまう人々も多くいるでしょう。
この「アニマル・スピリット」があるから経済は予測が出来ないということは、絶対的に頭に入れておくことです。
すなわちどんなにマクロ経済を勉強したとしても経済ないし、投資の予測は出来ないということです。
出来るのはマクロ経済の基本原理や、その分析手法を知っておくことにより、予測の役に立たせることくらいです。
マクロ経済学の全体像
まとめると「アウトプット」が「貨幣」と「期待」と互いに関連しながら動いていくのが、マクロ経済の全体像です。
これらの色んな動きがあるから、マクロ経済の予測は難しく、さらに為替や株価も予測は不可能に近いのです。
しかし、基本となる動きを知っておけば、今が正常で基本通りに経済が動いているのか、あるいは異常状態でどこかに歪みがある状態なのか。各国の中央銀行や政府がどのような動きをしいていくのかの、なんとなくの見通しがつきます。
よってマクロ経済学は重要なのです。