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AKB商法と戦略を真面目に考える

アイドルグループ「AKB48」の新曲「Beginner」の初回出荷数が103万枚に達したというニュースを見ました。 AKB48、新曲「Beginner」初回出荷103万枚!CD不況関係なし! このCD不況が叫ばれているにも関わらず、オリコン週間チャートでは5作目の初登場1位され、女性グループによる3作連続での初動50万枚超えは史上初。ソロを含めた女性アーティストでは2000年の宇多田ヒカル、2001年の浜崎あゆみ以来、4組目の記録と盛りに盛り上がっているAKBブーム。 自分も、AKB48は嫌いじゃない(というか、結構好き。)ので興味もあるし、今年大ヒットしたビジネス本「もしドラ」の作者がAKBのプロデュースに関わったということで、何かしらの関係があるのかなと思い、今更感かもしれませんが戦略とか考えてみました。 AKB商法と呼ばれるようなエゲツない売り方が話題になったりもしましたが、ちょっと考えてみたら極めて経営戦略の教科書的な感じがしました。

AKB48とは何者なのか AKB48の説明は、若い人だと常識だし、ちょこっとググれば出てくるので割愛しますが、まあ、おニャン子クラブなども作ったアイドルプロデューサー秋元康による女の子たくさんのアイドルグループなわけなんです。 2005年のデビューし、最初はその名前の通り「AKB=秋葉原」のアイドルとして、秋葉原のオタク層をターゲットとしてましたが、その後徐々にターゲットを広げていき、今では中高生をはじめ若者層全体がターゲットと言えるでしょう。 活動範囲は、上記のCDやダウンロード等の音楽コンテンツだけじゃなく、雑誌グラビアや写真集の出版、TVへの進出、そして秋葉原での公演やライブ・握手会といったようないわゆる「アイドル的要素」をコンテンツとしているわけです。 そして、それらの「アイドル的要素」コンテンツを顧客へ提供するにあたり、AKBならではのものが「会えに行ける」ということをメインコンセプトにしています。

AKB48のデビュー時は徹底的な差別化と集中化 今では、日本全国を相手にするトップグループですが、初期段階においてはそのターゲットも活動範囲もコンセプトも秋葉原層に徹底的に集中し、また他の音楽グループとも相当差別化されてました。 すなわちマイケル・E・ポーターの競争の戦略で言われるような「集中戦略」と「差別化」です。 プロデューサーがアイドル界の天上人「秋元康」であるにも関わらず、「Produce by Yasushi Akimoto」とし全国的なプロモーションをかけるのではなく、秋葉原という地域に集中させているのです。 ちょっと、当時の秋葉原を思い出すために記憶と記録に頼ります。 AKB48のデビューは2005年の暮れですが、当時の秋葉原は相当スポットが当てられた街でした。 例えば、電車男ブームやメイド喫茶ブーム、つくばエクスプレスやヨドバシカメラや秋葉原クロスフィールドの開業と秋葉原の街の雰囲気がどんどん変わっていくと共に、全国的に注目を浴びた街でした。 すなわち、従来の秋葉原の住人が居ながらも、そこにどんどん外部の人間が興味を持ったり、流入してきたりした頃でした。 今度は、当時の音楽のヒットシーンを見てみます。 当時の音楽シーンはモーニング娘ブームは過ぎ去り、ORANGE RANGEやケツメイシ、平井堅といった男性グループが相当な幅を利かしていて、「アイドル」なんて微塵も無い頃でした。 アイドル冬の時代と言われれば、それまでですが、だからこそ女性アイドルグループであるだけで競合相手との差別化をはかることが出来たのです。

AKB48のマーケティングの方程式 続いては、マーケティング的な分析をしたいと思います。 これには、AKB48の基本的なコンセプトである「会えに行ける」と、いわゆるAKB商法というのが深く関わっていると思います。 AKB48のCDの売上についての方程式を考えてみました。 ファンの人数×購入意欲確率×CD単価×購入枚数=売上高 こんな感じでしょうか? 「購入意欲確率」とは、自分の造語ですが、ある一人のファンが、そのCDを欲しくなり、実際に購入する確率と定義しました。 では、それぞれの変数について見ていきます。 初期段階においては、秋葉原のアイドル好きとターゲットが絞られているため「ファン数」は増やすことが出来ません。また、「CD単価」もなかなか上げることは出来ません。 というと、増加出来る要素としては「購入意欲確率」と「購入枚数」です。 これらを上げるためには、一人のお客さんに何回も公演などに来てもらうか、一人のお客さんに何個か商品を買ってもらう必要があります。この2つの要素を増やすために練られた方法がAKB商法なのでしょう。 つづいて、この「購入意欲確率」と「購入枚数」について見ていきます。

顧客密着度UPによって信者を作る あるファンが、新発売されたCDを買うという購買行動に結びつける要因はどこにあるのでしょうか? もちろん楽曲自体のクオリティという基本的な部分はクリアする必要があるにしても、それ以上に大きいのは、ファンのそのアーティストに対する「忠誠度」(いわゆる「ロイヤルティ」と呼ばれるもの)が高い必要があります。 つまり、AKB48信者をどれだけ多く作るかにかかっています。 この「忠誠度」を高める方法としては、 ・製品への基本的な信頼度 ・顧客に密着した接客技術 ・売主側と顧客、もしくは顧客同士におけるコミュニティシステムの醸成 などなどがあります。 本来、顧客へ密着するとは、ピタッとくっつく事じゃなくて顧客に近づくことで、お客さんのニーズを細かに読み取る事ですが、AKBの場合は文字通り握手会や秋葉原の劇場において顧客との密着度を高めたり、コミュニケーションをとったりしてます。また、この劇場というシステムは、忠誠度の高い顧客が集まることにより、顧客間同士のコミュニティシステムの醸成にも一役買ったのではないかと思います。

CD本来の価値を壊し、結果として何枚も買わせる つづいては一人のお客さんに何枚も同じCDを買わせるといういわゆる「AKB商法」についてです。 AKB商法とは、

アイドル・ユニットAKB48特有のオマケ商法。 一定の条件をクリアした高額購入者に限定して、アイドルが握手などをサービスする。複数の特典をコンプリートしたファンだけに、限定イベントなども行っている。 またAKBメンバーの写真集やグラビア誌では、同じ商品に対して複数パターンのオマケ特典をつけている。 これにより、一部のマニアがいくつも購入し、客単価が異常に高い場合もある。 たとえば、付録の生写真、付録ポスター、3種類ぜんぶ欲しいという熱心なマニアは、付録を全て集めるためだけに、同じ商品を3冊も5冊も買う例がある。オマケがランダムなので、3冊買っても、コンプできない場合があるためだ。握手会場の近辺などでダブった商品の大量廃棄が起こった例もある。   byはてなキーワード

ということです。 ここで、CDの購入によってお客さんが得られる価値について考えてみます。 本来、CDの価値とは、その中に入っている楽曲自体でした。 すなわち、 CDの価格 = 楽曲の価値 となり、このCDを買い、楽曲を聴けることに対してお客さんは対価(お金)を支払っていたのです。 しかし、現在はFreeの時代です。 Youtube等の登場によって、CDを購入しなくても色んな方法によって、楽曲を聴けます。メーカー側が法令などによって規制しようとも供給側はジャブジャブの状態で、需給関係によって楽曲の価値は下がりまくってます。 つまり CDの価格 > 楽曲の価値 の状態となり、CDの価格がそれで得られる楽曲の価値と見合わなくなり、CDはどんどん買われなくなったのです。 そこで、AKB48がとった戦略としては、CDに楽曲自体の価値を考えず、それ以外の付加価値を付けることでした。それが、AKB商法と呼ばれるもので、握手会のチケットだったり、生写真を付けたり、コンプリート感を付けたりすることで、 CDの価格 < 楽曲の価値 + それ以外の価値 となったことで、お客さんはCD購入による満足度が高まり、結果としてAKBの売上げに結びついているのです。 この「楽曲の価値」という、本来の価値からはお金は取らず、「それ以外の価値」などCDを買わないと得られない価値を付加したり、劇場に行かないと聴けない曲があったりして、その付けたしにお金を取るという戦略は、モバゲーやグリーなどの携帯SNSや、有名人のブログと有料メルマガとか、現在ではよく見られる手法に近いものであります。 また、AKB48がCD売上げにおいて「楽曲の価値」による付加価値を目指してないのは、Yotubeなどで公式ページを作り、供給者側が自ら動画をジャブジャブ流したり、曲だけを聴きたい層に対しては、ダウンロードで対応していることにも見られます。 本来、こういうのはCD自体の価格を自由に変動させることで対処すれば良いものですが、CDの販売販売制度上しかたなく、枚数で調整するしかなかったのでしょうね。

AKBの本当の強さは人事戦略だと思う これは、今年大ヒットしたビジネス本、「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」の作者である岩崎夏海さんが、元々は秋元康さんの下でAKB48のプロデュースに関わり、この本の構想がAKB48を元にしたということから想像したのですが、AKB48の強さの源泉は組織作りや人事戦略にあるのではないかということです。 アイドルは、自分たちが組織の一員であると共に、それ自体が商品価値をもっているという非常に属人性が強いサービスであり、よく色んな会社で叫ばれるような「人は最大の資産である」というドラッカーの言葉を体言しているようなものであります。 ここで、AKBの組織の特徴を挙げてみます。 ・AKB48で一つのチームではなく、チームA、チームK、チームBとそれぞれ16人ずつの小隊が3チームで成り立っている。 ・TV等に主に出てくるのは、各小隊のリーダー格やエース格である。 ・総選挙等の人気投票システムがあり、その結果がその後のポジションに大きく影響される。 などです。 これを見て考えたことは、AKB48は秋元康さんによるトップダウン方式の組織ではなく、メンバーからの意思を通しやすいボトムアップ方式の組織になっていて、各メンバーの「働きがい(いわゆるモチベーション)」を高く保ちやすい環境になっているのではないかということです。 芸能サービスとは、努力とその成果との関係が非常に曖昧なもので、その関係が分かりにくい事からベンチマークが不明確になり、「モチベーション」の低下やその結果としての努力や戦略の不足を招きやすいんじゃないかとも思います。 だからこそ芸能サービスを考えた場合、重要になってくるのはサービス主体の「モチベーション」を高くし、努力や戦略を継続させ、顧客に高い付加価値を与えられる準備をしておいた上で、千載一遇のチャンスが巡ってきた時に一気に吐き出す事が重要です。 準備不足でチャンスが巡ってきても顧客に高い満足を与えられる事が出来なくなり、一発屋として終わってしまうのです。 AKB48が小組織によって成り立っている事は、このメンバーの「モチベーション」を高く保つ事に強くつながっていると思います。 そして、総選挙などの「ファンによる投票システム」も、1競争、2結果、3責任をメンバーに与える事に役立っています。 すなわち、それぞれのメンバーにファンを増やすポジショニングを考えさせ、それを順位ということで結果を可視化することでフィードバックさせ、それが次のポジショニングを考えさせる事に役立っているのではと思います。古くからのメンバーが上位に来やすいシステムですが、その中でもダークホースのように駆け上がって来る新メンバーは自分のポジショニング獲得の天性の才能とか頭の良さを持っているんだなと思います。 また、この総選挙による上位者には、プロモーションビデオ等において厚遇するなど、ポジションとしてのインセンティブを与えています。それが上位者に責任感を与えると共に、下位者には競争心を煽らせている ことでより、高い競争をさせることにつながっているのではと思います。

まとめ とりあえず、AKB48について主要な戦略についてまとめてみました。 他にも、各地方に姉妹グループを作るといったフランチャイズ戦略や、外国にもターゲットを広げるといった国際化戦略。AKBの方法論を一つのフォーマットとして法的に権利化して、それを外国に輸出するといったフォーマット戦略などにも興味があるのですが、どうんなんですかね? そういえば、AKB48のデビューが2005年でしたが、Yotubueの創業も同じ2005年です。 タダメディアが広がり、CDが死んだと言われるこの時代。 コンテンツ産業はどうなっていくのですかね。

create/167506873-html/index.html.txt · 最終更新: 2019/05/21 by BenG